息子がお金で困らない人生を歩むための父からの助言

2021/03/02

子供の教育


 ○○(息子の名前)へ


1 「幸福な人生」

 君も春から高校生になり、自分の人生を考え始めるスタートラインに立つわけだ。

 これから、君が家を巣立つまでの数年間は、大人になるためにとても大切な準備期間です。

 今まで、君ができるだけ「幸福な人生」を歩んでいけるように育ててきたつもりだ。

 今の君なら、素直に人の助言を受け入れ、自らを律して、善悪を判断し、しなやかに生きていけると思う。

 今後、どのような人生を進もうが、君の意思で自由に進んでいくといい。

 君の飛躍を楽しみに、これからもずっと応援していくつもりです。


 今日は、君が大人への階段を上がり始めるに当たって、「幸福な人生」を歩むために、大切なことを伝えておきたい。


 人はどうなれば、「幸福な人生」が歩んでいけるのだろうか。

 「幸福な人生」の定義は、人それぞれ、価値観により異なります。

 でも、たいていの場合、「健康」でさえあれば、人生は何とかなるものです。

 「健康」は、適度な運動、食事、睡眠など、基本的な日々の習慣の積み重ねの結果です。

 今まで教えてきたとおりに、規則正しい生活を続ければそれでいい。


 だけど、時には自分でコントロールできない事故や病気などが起こるかもしれない。

 そんな時、もしも「お金」が無いと、「幸福な人生」を失いかねない。

 事実、「健康」で、ある程度の「お金」があれば、人生の大半の心配事は減ります。

 人生には、自分でコントロールできない出来事がいっぱい起こるけど、実は、「お金」は自分の意志である程度のコントロールができます。

 中学校の家庭科の授業で、「お金」の基本的なことは習ったはずだけど、ほとんど記憶にないだろうね。

 多過ぎる「お金」は、人生を狂わせかねないけど、ある程度の「お金」があれば、「幸福な人生」への自由度がグッと拡がります。

 では、どうすれば「お金」で困らない人生が送れるのだろうか。

 そのために、必要な「お金」のことを伝えたいと思います。


2 「収入」の確保

 まず、「お金」で困らない人生をおくるためには、安定した「収入」が欠かせない。

 でも、今すぐに、「収入」の確保について考える必要はない。

 高校生の今しかできないことをたくさん経験して人生を楽しもう。

 そして、高校生活の間に、ゆっくりと時間をかけて、将来を見据えた進路を一緒に考えていこう。

 さらに、大学生活の間に、君は、何に興味があるのか、何がしたいのか、人はなぜ働くのか、なぜ学ぶのか、いっぱい本を読んで、多くの人と交流して、様々な情報に接することで、いろいろな経験を積み、社会に巣立つまでの数年間に、自分の可能性を知り、拡げていくことだろう。


3 「家計」の管理

 実は、「お金」で困らない人生をおくるためには、「収入」の確保よりも、「家計」の管理の方がずっと重要なんだ。

 当たり前だけど、「収入」を超える「支出」をすると、誰でも貧しくなる。

 「収入」は、多い方が良いに越したことはないけど、「収入」がとても多いのに、「お金」で苦労している人はたくさんいるんだ。


 でも、「家計」の管理と言っても、別に、やることは難しくない。

 手取り収入の20%を貯金して、残りのお金で暮らせるように工夫すること。

 ひとまずは、これだけで十分だ。

 ただし、月々の残ったお金を貯金しようと思ってもできないので、給与天引きや積立貯金などを利用して、自動的に貯金できるシステムを構築するのがコツです。

 そして、毎月の生活費の12か月分(月12万で暮らせる場合は150万円程度)を銀行口座に貯金して、いざという時のための貯蓄として、手を付けずに確保すること。

 まずは、ここまで頑張ってみよう。


4 「支出」の管理

 独身なら、そんなにお金もかけずとも、結構楽しく、暮らすことができるはずだ。

 でも、物欲に支配され始めると、お金はいくらあっても足りなくなる。

 また、大人になれば、いろいろなお誘いは増えるし、日常的にコンビニなどでの無駄遣いをしちゃったり、高級車などが欲しくなるかもしれない。

 でも、たいていの嗜好品や贅沢品は、一時的には楽しくなるけど、人生を豊かにしてくれるものではない。

 支出は、自分への投資です。割に合う投資かどうか、よく考えてから支出しよう。


 また、社会人になると、生命保険や医療保険などの勧誘があるけど、加入する必要はない。

 独身のうちは高額な保険に加入しなくても、たいていの場合、国民健康保険と貯金で賄える。

 生命保険は、結婚して、子供が生まれたら、掛け捨て型の共済に加入すれば十分です。

 一方、国民健康保険と国民年金は必ず払うこと。

 

 支出管理のコツは、まず、固定費(家賃、通信費、保険など)の節減。

 また、健康のため、食費はケチらず、外食は控え目に、基本は自炊すること。

 クレジットカードは上手に活用し、使いすぎないようにして、キャッシング(高利借金)とリボ払い(高利借金の先送り)は絶対に利用しないこと。


 都会で暮らすのなら、自動車はいらないと思うけど、地方都市に住むなら自動車が欠かせず、自動車の維持は思ったよりお金がかかる。

 新車に強いこだわりがなければ、程度の良い中古車を探そう。新車に近いものでも断然安く手に入ります。


 自分が納得したことにお金を使うことを否定しないけど、物欲に支配されるがままに「浪費」しないようにすること。

 「浪費」しても、けっして「幸せな人生」は手に入りません。



 5 「マネーリテラシー」の獲得

 「お金」とは、何だろうか。

 「お金」とは、「通貨(日本円や米ドルなど)」のことを想像するだろうけど、「お金」は、もっと広い意味で、「通貨」も含めた「資産」のことだと考えてほしい。

 「通貨」の価値は常に変動しているんだ。

 基本的には、インフレーション(物価上昇)に伴い、通貨の価値は、少しずつ減少していくのが普通だ。

 でも、日本では、長い間、デフレーション(物価下落)気味なので、物価があまり上昇していない反面、給与の額面も増加していません。

 一方、諸外国では、物価が上昇していて、貨幣の価値は減少しているけど、それに伴い、給与の額面も少しずつ増えている。

 ここで、日本円と米ドルの関係(為替レート)を見ると、1ドルは、80円から120円の間を行ったり来たりしていて、近年は、その範囲内で変動を続けている。

 と言うことは、「ドルの価値はインフレで徐々に低下 ⇒ 日本はデフレだけど、ドルにつられて円の価値も低下 ⇒ デフレの日本人の給料だけそのまま」という悲しい現実が見えてくる。

 実際、外国に行ったり、旅番組を見ても気付くことがあるけど、新興国でも日本とあんまり物価が変わらないし、先進国に行くと物価がものすごく高いのにびっくりすることがある。

 コロナ禍が始まる前は、日本に旅行に来る外国人観光客がどんどん増えていたし、中国人観光客による爆買いが話題になっていた。また、日本の農林水産物の輸出額が過去最高額を更新していたのも、他の先進国に比べると、日本の物価が安くてお得と思われていたことも影響していると思う。

 デフレの日本だけで暮らしていると、なかなか気付かないけど、相対的な日本円の価値は低下し続けていて、じりじりと日本人は貧しくなっているんだ。


 こんな中、銀行預金の金利は限りなくゼロに近いので、銀行に貯金していても増えないし、通貨の価値は、放っておけば相対的にどんどん減少していく。

 また、今、日本はデフレ気味だけれども、いつ何時、インフレに転じるか分からない。

 だから、「お金」は、通貨(日本円)だけではなく、いろいろな「資産」に、振り分けて、「お金」の価値を減らさないために、上手に「お金」を守り、できれば、上手く運用して、増やしていく必要がある。

 そのことを「資産運用」と言うんだ。


 「資産運用」のことを考えたときに、銀行に相談に行っちゃう人が多いんだけれど、実は、銀行や郵便局、証券会社に資産運用の相談に行くのは、失敗の始まりなんだ。

 残念ながら、銀行や郵便局、証券会社の窓口担当者は、資産運用のプロではなくて、手数料が高い商品(彼らが儲ける商品)を販売することに熱心な、販売のプロなんだ。

 実際に、お父さんの周りでも、退職金の運用を銀行に相談に行って、手数料が高い割に質の悪い投資信託を買わされたり、リスクの高い外貨預金をさせられたりして、失敗してしまった人がいるんだよ。


 資産運用で失敗しないためには、自ら勉強して、自ら判断する力を身に付けることがとても重要なんだ。

 それを「マネーリテラシー」(金融知識、お金を管理・活用する能力)と言うんだ。

 幸い、今は様々な書籍やネットなどで、資産運用を学ぶことができる。

 でも、多くの人が資産運用で失敗しているんだ。なぜだろう?

 たぶん、情報が多すぎて、どれが正しいのかが分からず、十分な理解を得ないまま、資産運用を始めちゃうのかもしれないね。

 また、すぐに、大きく、儲けようとして失敗してしまう人も多いようだ。

 資産運用は、急ぐとロクなことはない。

 正しい知識を身に付けてから、徐々に資産運用に慣れていくべきなんだよ。


 資産運用には、投資や投機、様々な方法があるけど、まずは、一例をあげてみた。これは、覚える必要はないよ。参考までにざっと、読んでおいて。

「債券」 ⇒ 簡単に言うと、国や会社などにお金を貸すことで利子がもらえる権利だ。日本の国債はほぼ無リスクだけど金利がすごく低い。外国の債券は、日本国債よりは金利が高めだけど、為替リスクがある。

「外貨預金」 ⇒ 外国の通貨による貯金のこと。世界には、金利がとても高い国があるけど、為替リスクと現地インフレリスクが高いし、手数料も高いので、おすすめしない。

「株式の短期取引」 ⇒ 株式の短期取引(デイトレード)は、誰かが得をすれば、誰かが損をする、プロの世界で、素人は勝てない。手を出すな。

「株式の長期投資」 ⇒ 個別会社の株式は、その会社が成長すれば儲けるけど、価格が暴落したり、倒産してゼロになることもある、ハイリスクハイリターンの投資だ。おすすめはしない。もし、取り組むなら、覚悟をもってやること。

「投資信託」(やETF) ⇒ 投資家から集めた資金をもとに運用される商品。中でも株式指標(NYダウやA&P500、日経平均やTOPIXなど)に連動した投資信託(やETF)の長期投資(インデックス投資)は比較的安定した運用ができる。

「ロボアドバイザー」 ⇒ ウェルスナビやテオなどのロボアドバイザーは、お任せで世界分散投資ができる優れもの。だけど、手数料が高い(1%程度)。

「不動産」 ⇒ 不動産はプロの閉鎖的な業界であり、勉強せずに素人が参入するのは危険。不動産に投資するならリート(不動産の投資信託のようなもの)を検討すればいい。

「金」(ゴールド) ⇒ 株式のように利益は生み出さないので平時は不利。一方、インフレに強く、有事には価格が上昇するので、お金持ちは、危険分散のために、資産の一部を金で保有することがある。

「暗号資産」 ⇒ 暗号資産のもとになっているブロックチェーンという技術は非常に将来性が高い。一方、ビットコインなどの価格が暴騰しているけど、価格変動が非常に大きく、税制が不利(総合課税)なので、投資ではなく投機。おすすめしない。

「外国為替取引」(FX) ⇒ 投じた金額の何倍もの利益が期待できる代わりに、何倍もの損失が出ることもある。誰かが得をすれば、誰かが損をするゲーム。手を出すな。

「先物取引」 ⇒ 原油や食料、株式など、様々な物の将来価格を買う投資。だれも将来を予測できはしない。素人には危険。手を出すな。

「宝くじ」 ⇒ これは投機でもなく、夢を買う商品。買うならば、1枚だけをお楽しみ程度に。(もともとの当選確率が極めて低いので、1枚買った場合とたくさん購入した場合の当選確率の差が小さい)。一方では、高額当選者が、不幸になったのを、何例も見聞きしたことがある。

このほかの、うまい儲け話は、詐欺だと思って、だまされてはいけないよ。



6 株式への投資

 いろいろな資産運用の中で、最もおすすめするのは、株式への投資ですが、株式は価格の変動幅が非常に大きい資産なんだ。

 過去には、大恐慌、ブラックマンデー、リーマンショック、ITバブル、ギリシャ危機、チャイナショック、最近では、コロナショックなど、数えきれないほど、何度も大暴落を繰り返してきたんだ。


 ならば、株式への投資は危険なのだろうか。

 しかし、よく考えてみてほしい。

 株式は何度も暴落を繰り返しているけど、アメリカでは、NYダウ平均株価やS&P500指数などの株式指標の最高額が更新され続けている。

 日本の株価も、バブル時の最高額には至っていないけど、高値で推移している。

 アメリカにおける過去200年以上の超長期的な資産価値の変化を見ると、ドル(預金)、株式、債券(長期債、短期債)、金(ゴールド)のうち、株式が桁違いに成長している。


  1801年の1ドルが、株式では200年後の2001年に、75万ドル以上の価値になり、何と75万倍だ。

 一方で、金(ゴールド)は200年でたったの2ドルにしか値上がりしていないし、ドル預金なんて逆に目減りしてなんと6セントの価値しかない。

 株式は、暴落を繰り返すけど、長期的には価格が回復して、さらに成長を続けてきたという過去の実績があるわけだね。


 では、株式は、これから先も、ずっと成長し続けるんだろうか。

 こればかりは、専門家でも予測できないのが正直なところだ。


 だけど、株式の仕組みを知れば、その成長に投資する価値がわかると思う。

 まず、前提として、人は常に利便性を求め続けてきたし、これまでも、これからも新しい技術や産業を生み出し続け、少しでも豊かな生活を手に入れようと頑張り、儲けたいという欲望は誰にも止めることができない。

 良いか悪いかは別にして、世の中はそうやって日夜、成長を続けている。

 そして、現代社会は、世界中が資本主義で動いている。

 民主主義や社会主義、共産主義など、世界にはいろいろな政治体制の国があるけど、経済はどこも資本主義だ。

 資本主義の社会は競争社会であり、多くの会社は、資本(お金)を株主から集めて成り立っている株式会社だ。

 株式会社は、利益を出すために日々成長を目指し続ける存在であり、成長できない会社は淘汰され、新たな成長できる会社が生まれ続けている。


 株式を手にするということは、その会社の権利の一部を持つ「株主」になることであり、会社の利益の一部は株主に還元(配当金)される。

 発行された株式の総額は、その会社の価格(時価総額)で、実際、その会社の全株式の過半数を保有すると、その会社の実質的なオーナーになることもできる。

 株式は、その会社の将来価値であり、株式を買うということは、その会社の短期的な評価や持続的な成長を買うということになる。

 株式市場全体は、その国や社会における有数の株式会社の集合体なので、その社会全体の経済動向を表す指標でもあるんだ。

 また、日本の人口は減少を始めているけど、アメリカも含めて全世界の人口は、統計上、2050年には96億人程度にまで増加し、2100年頃までは緩やかに増加を続ける予想だ。

 世界全体としては人口増のボーナスを受けて、しばらくは経済成長を続ける可能性が高い。


 要するに、株式投資は、人間の豊かになりたいという欲望と努力、その人間の増加によって、株式市場が成長を続けることに賭ける投資なんだ。

 今後、会社や社会が成長すると思うのならば株式に投資する価値があるし、今後、世界が崩壊していくと思うのなら、ゴールドなどの有事に強い資産への投資が考えられる。

 だけど、第一次世界大戦や大恐慌、第二次世界大戦、幾多の経済危機を経てもなお、株式は成長を続けてきたことを考えると、逆に、株式以外の何に投資したら安全なのか解らなくなる。

 ちなみに、通貨は、有事に最も弱い資産の一つだ。過去には、紙切れになった通貨も少なくない。


 では、株式ならば、何でも成長するのか。

 東京電力、山一證券やリーマンブラザーズなどの例を見ても分かるように、まさかという大企業が、天災や不祥事、経営不振や廃業に見舞われることは少なくない。

 一方、昔、株価が安かったうちにグーグルやアマゾンなどの株式を買っていた人たちは、資産を何倍にも増やしている。

 それならば、これからグーグルやアマゾンのように大きく成長する企業を見つければいいわけだ、簡単に大儲けできるよね。

 もしも、これが可能ならば、株式投資をしている人は、みんな大金持ちの大資産家になっているはずだ。

 だけど、実際にはそうでもない。

 実は、金融業界プロでも、伝説的な大投資家も、ベテランの個人投資家でも、将来大きく成長する会社を見つけるのは、とても難しいことなんだ。

 


7 株式市場の指標に連動する投資(インデックス投資)

 個別の会社の株式は、その会社が利益を出したり成長すれば、大きく儲ける可能性もあるし、会社の利益の一部が配当金として支払われるので、長期的な投資には魅力がある。

 その反面、予想外の暴落や会社の不祥事、倒産などで大損することもある。

 短期で、大きく儲けたいと思う人は、大きなリスクをとる必要があるが、

 着実な資産形成には、個別株式への投資のような大きなリスクをとる必要はない。

 株式投資で失敗しないためには、短期的な大儲けを目指すのではなく、長期的な株式の成長(社会の成長)に賭けることだ。


 日経平均株価とか、ニューヨークダウ平均株価とか、ニュース番組で聞いたことがあると思うけど、これは、株式市場の指標「インデックス」と言われる。

 このインデックスに連動させるように運用する投資信託(やETF)を買って、長期的に保有するのが、「インデックス投資」といわれる投資法だ。

 インデックス・ファンドの定期積立の設定をしたら、自動で積立されるので、あとは何もやる必要がない。


 株式市場は、過去の実績では、長期的に年平均5%程度で成長してきたので、これに連動するインデックス投資でも長期的には同程度のリターンを見込んでいる。

 インデックス投資は、株式市場の平均値に連動するので、当然、平均値を上回ることはできず、短期間に、大きく儲ける投資法ではないけど、やり方さえ間違えなければ、大きく損することもない投資法といえる。

 インデックス投資は、株式市場の指標に連動するので、連動する指標が下落すれば、当然、保有している商品の価格も下落する。

 このような時、保有している商品の価格が下落したのを、我慢できずに売ってしまうのが、最も多い失敗例だ。

 また、保有している商品の価格が上昇したからと言って、短期的な視点で、売って利益を確定するのも得策ではない。

 インデックス投資は、株式市場全体が長期的には成長を続けるという、社会の持続的な成長に賭ける投資なので、短期的な価格の上昇や下落には一喜一憂せずに、将来的な値上がりを信じて、保持し続ける「我慢の投資法」なんだ。

 こつこつとインデックス・ファンドに積立投資を続けていくことで、徐々に資産が積み上がり、長期的な株式の成長によって、積み上がった資産も着実に成長し、将来的には十分な資産形成ができる確率が高いというわけだ。



8 株式投資はあぶない

 世間一般では、「株式投資はあぶない」と思われている。

 日本では、高度経済成長期から平成バブル崩壊まで、預金金利が高く、1992年頃は預金金利が年6~8%もあり、銀行に預金するだけで、誰でも簡単に資産運用ができたんだ。

 銀行預金は元本が保証されるので絶対に損をしないし、6~8%もの預金金利ならば、10年で約2倍に増えるので、ほとんどの人は、わざわざリスクのある株式に投資しようとは思わないだろうね。

 一方、平成バブルが崩壊して、株式投資で大損をした人たちが社会にあふれ、その後も、長期間にわたり、日本経済と株式市場は低迷を続けたので、株式投資はあぶないという認識が定着していった。

 そして、日本で株式投資が定着しなかったもう一つの理由は、多くの人たちが、証券会社の窓口で、手数料が高い割に不利な投資商品を買わされたり、すすめられるがままに、株式の頻繁な売り買いを繰り返してしまい、長期的な視点での株式投資ができていなかったことだ。

 だから、日本には、株式に長期投資するという文化が定着していないんだね。


 また、多くの人が株式投資に興味を持つのは、株価が上昇して、マスコミの報道が増える時だけど、なぜだか、株式投資を始めると、ある一定の割合の人たちは「自信家」になってしまい、「安い時に買って、高い時に売ればいいだけだろ、簡単だ。」って思ってしまうらしい。

 株式がいつどこまで値上がりして、いつどこまで下落するかなんて、誰にも予想できないのに、それが自分にはできると過信してしまうんだ。

 投資を始める前は、預金金利よりも少しでも増えればいいなと控えめに考えていた人でも、人間は欲深いもので、いったん投資を始めると、いつの間にかに、短期間に、大きく儲けようとして、過度なリスク(個別株の集中購入、過剰な資金投入、信用取引、レバレッジなど)をとってしまいがちだ。

 的確な売り買いの判断ができるプロの投資家でさえ間違う世界なのに、ほとんどの個人投資家は、過度なリスクをとると、株価の暴落時の含み損を我慢できずに判断が鈍り、最悪のタイミングで株式を売って大損をしてしまうのがオチだ。

 そして、投資で損をして退場した人は、「株式投資は損をするからやめた方がいい」と言い、一方、株式投資で利益を上げている人は「株式投資は儲けるからやった方がいい」とは言わないものだ。

 そして、インデックス投資の一番の敵は、もっと儲けたい、損失が辛い、積立投資は退屈だ、などという自分の感情だ。

 人間の脳は、すぐに騙されるので、自分の感情に流されず、最初に決めた方針のとおり、機械的に淡々と積立投資を続けることが重要だ。

 資産運用に余計な時間を使わずに、ほかの有意義なことに時間を使おう。



9 インデックス投資で失敗しないために

 インデックス投資で成功するための真理は、社会と株式市場の持続的な成長を信じて、「投資を続けること」だ。

 そして、株式市場が暴落した際にも、相場が低迷を続けたときにも、淡々と積立投資を続けることが最も重要なんだ。

 インデックス投資に最も必要なことは「忍耐力」だ。


 もしも、相場が下落した時に耐えられないと思うのなら、自分の総資産のうち、株式の占める割合を見直してみよう。

 こういう時は、株式との相関関係が小さい債券を、一定の割合で持っておくと、株式の大きな値動きを、債券で緩和して、ある程度リスクを小さくすることができるという、ノーベル経済学賞を受賞した理論(現代ポートフォリオ理論)がある。

 だけど、今は、金利が低すぎて、債券本来のメリットが生かせないので、債券の代わりに、資産の半分程度を現金で保持するのがいいと思う。


 このような、株式や債券、その他の資産の割合を、資産配分(アセットアロケーション)と言い、長期的な資産運用の成績を決める重要な要素です。

 株式市場が、常に右肩上がりであれば、株式100%の資産配分がベストですが、株式市場は常に暴落する可能性があるので、資産の大半を株式で占めるような資産配分は避けよう。

 一方、自分のリスク許容度が許すなら、株式の暴落時に更なる追加投資(安い時に買う)が出来れば、将来的には、大きなリターンを得ることができるけど、無理はしないように。

 さらに、収入が増えるようなら、月々の積立貯金や積立投資の額も徐々に増やしていこう。

 長期間にわたり徐々に株式資産を積み上げていくことによって、自分のリスク許容度と下落相場を耐える精神力(メンタル)もコツコツと高めていくといい。

 繰り返すけど、暴落しても、長期的には市場価格は適正価格に回復すると信じて、あわてて売るようなことはせずに、長期保有すること。


10 インデックス投資の果実

 インデックス投資は、すぐに儲けるうまい話ではないけど、「複利」のちからを借りて、長期的には資産を殖やしていくいくことができる。

 しかし、「複利」のちからが存分に発揮されるには、時間を味方につける必要があり、20年より、30年、40年と積立投資を続けることで、資産が増えていくんだ。

 例えば、23歳から月3万円を積立投資し、年利3%で運用できたとすると、60歳で2,564万円(元本1,368万円)に増える。

 あとは、投資への入金力と運用利率次第で、月々の積立額が月3万円より月5万円の方が資産形成に有利なのは当然だ。

 運用利率は、株式市場の成長次第だけど、年利がマイナスの年もあるだろうし、年利が10%を超える年もあるだろう。平均すれば、年利5%程度を期待したいところだね。


 また、「複利」の性質上、元本が大きいほど資産の増加は加速度的に増える。

 100万円は年利3%で3万円だけど、10億円は3,000万円を生み出す。お金持ちが、さらにお金持ちになる理由の一つだね。

 日本の個人金融資産は、1,900兆円程度あるらしいけど、その半分以上が預貯金で、投資には7%程度しか回されてなくて、日本の個人金融資産は伸び悩んでいるんだ。

 一方、アメリカでは一般的な家庭でも株式投資が普及(投資している家庭とそうでない家庭の経済格差が激しいけど)していて、個人金融資産の半分以上が投資に向けられているので、個人金融資産は増え続けている。

 日本でも、個人金融資産が預貯金だけではなく、正しく株式投資に向かえば、日本は世界でも有数の金融大国になれるだけのポテンシャルはあるんだけどね。

 現に、日本の年金資産を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、世界最大級の機関投資家だけど、日本株式、日本債券、外国株式、外国債券をそれぞれ1/4の資産配分で運用していて、国家予算を越える数十兆円という巨額の利益をあげているんだ。


 日本政府も国民に投資を推進し始めており、近年、一般NISA、ジュニアNISA、つみたてNISA、イデコなど、次々と有利な制度を創設している。

 まずは、銀行口座と証券口座を開設して、せっかくなので、ジュニアNISAの非課税枠を活用して、一緒に投資の勉強を始めてみよう。

 投資の知識は、コツコツと積立投資を実践しながら、少しずつ身に付けていこう。

 投資信託を買った後は、基本的にはほったらかしなので、何も難しいことはないよ。

 そして、20歳になったら、積立NISAを始めてみよう。

 その後、どんな職業を選ぶかにもよるけど、少額でもいいからイデコを始めるといい。


 もし、積立NISAを毎月33,333円、イデコを毎月23,000円、60歳まで投資できれば、積立NISAが20年で800万円の元本、イデコが38年で約1,000万円の元本が積み上がる。

 あとは運用利率次第だけど、仮に平均年利3%で運用できたら、両方合わせて約3,850万円の資産に成長するので、老後の生活資金を補填するには十分だろう。


 繰り返すけど、投資で、大儲けしようとは考えないことだ。

 時には、株式市場が冷え込んで、含み損を抱えて、耐える時期もあるだろう。

 そんな中でも投資をやめず、コツコツ積立投資を続けて、少しずつ時間をかけて資産を形成していくことだ。


 「お金」のことは、誰も教えてくれないから、ほとんどの人が知らなかったり、誤った知識を持っている。

 また、日本では「金儲けは、けしからん」と考える人たちがとても多いんだ。

 だから、「お金」のことは、友達や周囲の人たちには話さない方がいい。

 なお、2022年から高校の家庭科の授業で、資産形成についての勉強が始まるけど、調子に乗って、友達に投資の話をしないこと。


11 さいごに

 お父さんが若い頃には、今のような恵まれた投資環境は無かったので、若いころから投資できる君たちが、正直、羨ましいです。

 お父さんも、君が生まれたころに、投資信託のことを調べたことがあるんだけど、当時は、手数料が高かったし、何より、リスクを負うのが怖かったので、手がだせませんでした。

 おかげで、大きな損をすることもなく、今に至っているので、結果オーライかもしれないけどね。

 今は、投資環境が昔よりもずっと整っているので、株式の投資信託によるインデックス投資を中心として、資産形成に取り組めば、短期的には損失が出る時期もあるだろうけど、長期的には安定した金融資産が形成ができるはずだ。

 コツコツと積立投資と積立貯蓄を続けていけば、将来の「お金」に関する心配は減ります。

 将来の「お金」の心配がなくなれば、「お金」のことから「自由」になり、「幸せな人生」を歩むことだけに集中できるようになると思います。

 次の時代は、いったい、どんな世の中になっているか、とても予想なんてできないけど、今のうちから資産形成を続けていけば、将来は、ちょっとした資産家になれるかもしれないね。

 この手紙が、君の明るい「幸福な人生」の糧になるように祈っています。


2021年初春

父より


「インデックス投資の始め方」 ~簡単ですが、継続は忍耐が必要です~


プロフィール

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3匹の猫にお仕えする猫下僕です。 息子の子育てが一段落し、教育費用(大学進学費)のめどが立ち、ようやく自分らの老後の準備を本格化せてています。

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