サクラサク季節 「学習塾が果たす役割と学歴社会の現実」

2021/03/17

子供の教育

 私が住む地域では、今日、公立高校の合格発表が行われました。

 ほとんどの子供たちにとっては、初めて、人生の岐路に立ち、悲喜こもごもの感情を味わったことでしょう。


学習塾が果たす役割

 もう、30年以上も前の話ですが、私は高校受験に失敗した口で、第一志望の公立高校に落ち、第二志望の私立高校に進学させてもらいました。

 私は、学習塾に通った経験がありませんが、当時はそれが当たり前で、学習塾に通っている子の方が少なかったように記憶しています。

 それが、今では、中3の大半の子が、何らかの学習塾に通っており、うちの息子は小学5年生の3学期から学習塾に通い始めました。

 それから4年間とちょっと、私も親として何度も学習面談に立ち会いましたが、正直なところ、「こりゃ、大手の学習塾に通った子に、敵うわけがないな。」という印象を強く受けました。


 まず、ノウハウと情報量が違います。

 数十年にわたる受講生の情報分析から、合格ボーダーラインを正確に割り出し、生徒ひとりひとりに合わせた目標を設定した指導が徹底されています。

 受験問題の難易度は相対的に高く、学校の試験結果では全く参考にならないことなど、高校受験当時の私が知る由もなく、明らかに「井の中の蛙」だったわけです。


 また、実績が桁違いです。

 私の住む地域では、昔から公立高校が上位校で、中でもトップ2校が人気です。

 そのトップ2校は、それぞれ定員が400名程度ですが、息子の通う学習塾は、毎年、それぞれの高校で200名以上の合格者を輩出しており、もう一つのライバル塾と合計すると、なんと合格者の8割程度を大手の学習塾出身者が占めます。

 これはもう、大手の学習塾に通っていなければ、合格できないレベルのまさに独占状態です。

 

 さらに、子供たちのモチベーションの維持にかける手間が半端ないです。

 昔のような「軍隊式」の「洗脳」に近い指導法ではなく、子供たち一人一人に向き合い、目標を設定して、上手に導いてくれます。

 移り気な子供たちは、すぐにモチベーションが低下するのですが、親も含めてフォローしてくれるなど、受験前日まで、ずっと伴走していただき、なんとも頭の下がる思いです。

 もしも、これを親がやろうとしても、まず子供とけんかになってしまうことでしょう。


 子供たちは、「放っておけば、勉強しません」、そういう生き物です。

 この状況に対して、たいていの親は、「勉強しなさい」と口うるさく言ってしまいがちなのですが、「勉強しなさい」と親に言われて勉強する子がいますか? 

 自分が子供の頃、親に「勉強しなさい」と言われた時に、どう感じましたか。

 子供に勉強させたければ、「勉強する環境に放り込んであげる」のが最も効率的なのです。


 一方、学習塾のデメリットは、何といっても、「経済的な負担」です。

 高校受験を控えた中3から学習塾に通わせるご家庭が多いのですが、正直、これでは間に合わないと思います。少なくとも中2、出来れば中1から入塾した方が、子供たちの「学習負担」は確実に少なくなります。

 ですが、親の「経済的な負担」は、正直言って、予想以上に大変です。

 ベースとなる月々の月謝だけと思って油断していると、春期講習、夏期講習、冬期講習、○○模試、△△模試、□□トレーニングなど追加出費がかさみます。


 でも、多額の経済的負担をして、受験戦争を勝ち抜き、高学歴を手にできれば、果たして、幸せになれるのでしょうか。


学歴社会の現実

 一昔前までは、受験戦争を勝ち抜き、高学歴を得ることができれば、それなりの高収入が得られる職業に就ける時代がありました。

 しかし、以前の投稿でも触れたとおり、現代社会では、高学歴でも高収入を得ることが約束されたわけではなく、それどころか、高学歴でも正社員にさえなれないケースも少なくありません。


 では、「高学歴は無駄」なのでしょうか、それとも、「学歴社会は終わった」のでしょうか。

 いえ、依然として、現代でも「歴然とした学歴社会」だと感じています。

 私もいい年齢になり、「採用される側」から、「採用する側」の立場になってきましたが、採用希望者の本当の能力など、短時間の面接やオリエンテーションで正確に把握できるわけがありません。

 採用希望者の基本能力は、やはり、「学歴」で判断せざるを得ないのです。

 その人の「学歴」は、受験戦争を勝ち抜き、コツコツと勉強してきた結果であり、その人の「努力の証」でもあるわけです。

 ならば、「高学歴」なら採用されるのか、いえ、「学歴」は、あくまでもスタートラインに立つ「条件」にしか過ぎません。

 多くの採用希望者を選考する場合、「ふるい」にかける必要がありますが、「学歴」はこの「ふるい」に最適なのです。

 「学歴」という「ふるい」で、まずは「努力してきた人」を選出し、その中から面接やオリエンテーションなどを通して、ようやくその人の「能力」が評価されるのです。

 「起業するなら高学歴はいらないのでは」と言う人もいますが、実は、経営者の方々ほど、ご自身やお仲間の「学歴」を気にしているものですし、社会の中で同窓会の存在は、決して無視できるレベルのものではありません。

 昔のように「高学歴」は「高収入へのパスポート」にはなりません。その入り口に立つための整理券くらいの価値しかないのかもしれませんが、親ならば、スタートラインくらいには立たせてあげたいものなのです。それから、どう生きるかは本人の自由にすればよいでしょう。


 我が家では、息子と将来のことを話す機会も増えてきたのですが、私は正直に社会の現実を伝えています。それを理解したうえで、本人は「高校でも塾に行きたい」と言って、すでに高校部に通い始めています。我が子ながら「すごいな」と感心してしまいます。


 その息子も「サクラサク」でした。30年前に私が落ちた高校です。

 おめでとう。

 そして、君の父親にしてくれて、ありがとう。

 

努力が報われにくい社会に我が子を送り出す苦悩への処方箋はあるのか


プロフィール

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3匹の猫にお仕えする猫下僕です。 息子の子育てが一段落し、教育費用(大学進学費)のめどが立ち、ようやく自分らの老後の準備を本格化せてています。

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