努力が報われにくい社会に我が子を送り出す苦悩への処方箋はあるのか

2021/03/15

子供の教育


 「一流大学の教授」は、学歴社会の頂点、言わば「あがり」のポストの一つとも言えますが、そのような方でも、私と同じような、子供の将来、この先の日本社会に対する漠然とした不安を抱えているようです。

 かなり考えさせられる良記事を見かけましたので、ご紹介と感想を述べてみたいと思います。

現代ビジネス 大学教授の僕が12歳の息子に「自分みたいな大人になるな」と話す理由

 著者は、慶応義塾大学経済学部の教授で、東京大学卒、財政社会学の専門家というバリバリの経済学者の方です。

 詳しくは、記事を読んでいただきたいのですが、「子どもたちにどうやって社会を語ればいいんだろう」と思い悩んでいる事情が綴られています。

僕は、最近よく、「俺のようになったらいけんよ」と子どもたちに言う。

 有名大学の教授ともあろう地位の方が、「俺のようになるな」と。

自分たちと同じ生きかたを押しつけても、きっと彼らは幸せになれない、と心底、思うからだ。

 当ブログでも、何度か触れていますが、日本社会は確実に衰退に向かっており、ここ20~30年の間、賃金は増えるどころか、税金だけが上がり、手取りは目減りしています。

 世界中で日本だけがデフレで時間が止まっている間に、諸外国ではインフレが進み、それに伴い所得も少しずつですが増えています。

 日本の中でだけ暮らしているとなかなか実感できませんが、1ドル=100円前後のボックス圏内にありますので、日本人は諸外国に比べて相対的に、じりじりと貧しくなっているのです。

 経済学の専門家である著者は、この状況を十二分に、誰よりもご存じのはずです。

 そして、慶応義塾大学といえば、日本トップクラスの私立大学ですが、厳しい受験戦争を勝ち抜いた末に無事に卒業して、正社員の職に就けたとしても、お世辞にも高収入が約束されるわけではないという、教え子たちの現実を見る機会も多いのでしょうね。

 これから、受験戦争に突入していく我が子たちに対して、この現実をどう伝えるべきなのか、思い悩むわけです。

 子供たちの教育上、「頑張れば報われる」という大前提をひっくり返すわけにはいかず、「それなりの学校に行けば幸せになれる」と言って、衰退していく社会に送り出すわけにもいかないというジレンマ。

 著者は、私と同年代の方ですが、お子さんは12歳と、私の息子よりも少し下の学年のようです。さすがに大人としての自我が形成される前の12歳の子供に、社会の現実を伝えるのは得策ではないでしょう。

 この状況の中で、著者は、社会の在り方を変えるべく問うてきました。

この社会をどう変えるか。それは政治の力であり、そうしたビジョンを示す政党を見極め、僕たちの大切な1票を投じていくべきだ。

 まぁ、正論ですね。社会経済学者としては、大上段に構えたうえで、問題を斬っていく必要があったのでしょうが、私たち庶民の対処法としては、いまいち現実的でない方法論でした。

 最後に筆者は、

生活の安心を土台に、すべての子どもたちが、自分の将来の子どもに教えるべき何かを持てる社会。そんな社会の語りかた、作りかたを考えるささやかな努力の先に、未来の幸せよりも、いまの目の前の幸せを大事にできる、おだやかな世界が待っているような気がする。僕はもっと語りたい。子どもたちと。この社会について。

 と結んでいます。この記事では、残念ながら「処方箋」は示されませんでした。


努力が報われにくい社会に我が子を送り出す際の処方箋

 この記事に対する私の処方箋としては、当ブログのテーマでもある「子供のマネーリテラシー形成」ではないかと感じています。

 著者の主張のように、社会をより良い方向に進めるように努力することは非常に重要であり、本来はそれが理想なのです。しかし、現実的には、これから子供たちが巣立っていく社会は、より厳しい社会になっていくのだろうなという、ある種の諦めがあるのも事実です。

 一方で、日本には1,900兆円もの個人金融資産があり、その半分以上は預貯金として眠ったままであり、投資には7%程度しか回っていません。

 日本の個人金融資産のうち、もしも、もう1割が投資に回れば190兆円もの巨額の投資マネーとなり、経済を回す潤滑油になるとともに、その年利回りが仮に3%とすれば5兆円を超える利益を国民にもたらし、国内需要の底上げにもつながるでしょう。

 当然、国も、似たような試算は何度となく繰り返しているはずですから、各種NISAやイデコを制度化したのでしょうし、高校生の金融教育を始めるきっかけにもなったのだと思います。

 しかし、貯蓄を選好する日本人の国民性がそう簡単に変わるとは思えませんし、変わるにしても少なくとも十数年はかかるでしょうから、非常に気の長い話になり、とても、今を生きる我々や次の世代である子供たちの将来には、間に合いそうもありません。

 ですから、私たちに必要な処方箋としては、少なくとも自分の子供たちには、今を生き抜くために必要な「マネーリテラシー」を与えてあげるべきなのです。

 「マネーリテラシー」と言うと、子供たちに金儲けを教えるなぞ「けしからん」と言うかたもいらっしゃるでしょうが、別に投資でお金儲けをしなさいというものではなくても、「少ない生活費で楽しく暮らすための知恵」であったり、「貯蓄の重要性」とか、「浪費への戒め」などで十分だと思うのです。

 その延長線上に、高校での教育が始まる「投資信託による資産形成」のことであったり、つみたてNISAやイデコを活用した「積立投資」があっても良いのではないでしょうか。

 日本でも、投資の話が、世間にはばかられることなく、雑談として話せるような世の中になれば良いのですが。



プロフィール

自分の写真
3匹の猫にお仕えする猫下僕です。 息子の子育てが一段落し、教育費用(大学進学費)のめどが立ち、ようやく自分らの老後の準備を本格化せてています。

カテゴリー

ブログ アーカイブ

QooQ